N.01
( WOOLRICH 24FW )
 

「アークティックパーカ」は、
1972年の誕生以来、
機能という信頼を得ることで変わらない価値を持ち続けてきました。いつでもオーセンティックであるために、
2024年モデルはシルエットの微調整により、現代のムードを取り入れました。開発の背景やこれまでの歩みを振り返りながら、この一着の魅力を改めて紐解きます。

1970年代のウールリッチは、すでに創業140年を超える老舗でした。古くは1861年の南北戦争から、そして世界規模の紛争時にはブランケットやユニフォームなどを軍に支給し、南極をはじめとする極地探検隊には衣服を提供するなど、アメリカにとって重要なサプライヤーであり続けていました。そして1972年、極寒のアラスカで着用するための労働着の開発を政府から依頼されたウールリッチは、国家事業のための防寒着を開発することになります。

「アークティックパーカ」の誕生です。マイナス40度にも冷え込むアラスカの屋外で、パイプラインを繋ぐ作業工員に必要とされたのは、命を守ることができる防寒性と、仕事の生産を高めるための動きやすさの両立です。そのニーズに応えるかのように、インサレーションのダウンは適切なボリュームで封入しました。また、高い堅牢性と防水性からアウトドア業界で注目されていた60/40クロスを表地に使用しました。そして大自然の中で育った天然のコヨーテファーでフードを包み込みました。グローブを身につけたままでも扱いやすい、必要最低限の大きなボタン、大きなハンドウォーマーポケット、そして荷物の出し入れがしやすいフラップポケット。あらゆるシーンでアメリカを支えて続けてきたウールリッチの「アークティックパーカ」は、すべて理由をもった素材やディテールによって完成されています。

21世紀になり、大量消費志向へのアンチテーゼからファッションが理由のある服を求めるようになると、ワークウェアとして信頼を得た「アークティックパーカ」は街着として大きな注目を集めます。そうしたトレンドのニーズの高まりから、2012年にアップデートモデルを発表しました。アメリカの要請によって誕生した背景はそのままに、シルエットを現代的にアレンジすることで、ヒストリーとストーリーを正確に、途切れることなく継承しています。

A new authenticity with classic mood.

クラシックなムードを強めた
新しいオーセンティック

そして2024年、新しい「アークティックパーカ」の誕生です。細部を見てもその変化には気づきにくいかもしれません。しかし実際に着てみると、今までとの違いを感じることができるはずです。身体を大きく包み込むようなシルエットを目指し、着丈の長さ、アームホールの太さ、身幅や肩幅などのバランスを工夫しました。ゆったりとした着心地は、より初期のオーセンティックなムードに近いと言えるでしょう。

ディテールも当時の特徴を引き継いでいます。表面に使用するRAMAR 60/40 CLOTH アウターシェルは、ナイロンの堅牢性、コットンの快適性を備えたウールリッチを象徴するファブリックの一つ。湿気を含むとコットンが膨張して水分の侵入を防ぎつつ、ナイロンが通気、撥水性を発揮します。素材を組み合わせることでお互いの特徴を活かし合った、20世紀の画期的なファブリックです。

ウールリッチの本社があったペンシルバニア州は、生殖能力の高いコヨーテの異常繁殖が環境に悪影響を与えないよう、長い年月において対処を重ねてきました。自然と生態系を守るために必要な駆除数は、毎年数十万匹とも言われています。この取り組みに私たちが貢献する一つのかたちが、ファーとしての使用でした。

インサレーションには動物が倫理的、法的にも最良の方法で扱われていることを保証する、厳選されたサプライヤーから調達した羽毛のみを使用しています。それは国際的な自主規格、RDSに認定された天然のダウンです。柔らかさ、軽さ、温かさ。着用時にかかるストレスを取り除く、3つの要素を備えています。

命を守るための生まれた防寒着が、男女問わず愛される存在であり続けるために、私たちはできることを常に考えています。それは文化的価値というニーズへの努力です。時代とともに変わっていく素材に対しての考え方、シルエットに対する感じ方を理解し、変えるべきものとそうでないものを常に選択し、現代におけるオーセンティックを表現しています。

Photography_Teruo Horikoshi [TRON]
Styling_Itsumi Takashina
Hair & Make-Up_Taeko Suda
Model_ Jeremy [west management],
Alissa [west management]
Design & Development_past inc.
Production_MANUSKRIPT

( 2024.09.13 )