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WOOLRICH OUTDOOR LABEL DAIKANYAMA Pt.2
鰤岡力也に学ぶ、ショップデザインの極意。ウールリッチの新店の魅力はどこに?

Dec 26, 2023

店内に配置されたモーブレーワークスによる家具。


「モーブレーワークス」といえば、鰤岡さんが手掛ける家具も見どころのひとつ。もちろんこの店でも、そうした家具の数々が空間をより一層魅力的なものにしています。

太陽の光が気持ちよく入る空間に配置された木製の家具。試着室の前に置かれ、リラックスしながらスタッフとのコミュニケーションを楽しんだり、服を吟味したりすることができるのです。

「ランプシェードは〈ラファブライト〉というフランスのメーカーのものにしました。ぼくの自宅でも使っていて、お気に入りなんです。他にはない和洋折衷なムードが好きです」

「椅子はイギリスのどこかのガーデンで見た3人がけのベンチを参考にしました。それがずっと頭の中にあったんです。デザインを思い出しながら、ひとりがけ用にアレンジしています。クッションのファブリックもイギリスのメーカーのものを選びました」

試着室に置かれているオットマンも鰤岡さんのお手製。バッファローチェックの生地は、〈ウールリッチ〉の工場がアメリカにあった時代につくられたものが奇跡的に残っていて、それを使っているのだとか。

「ちなみに試着室の絨毯は〈山形緞通〉という、日本で最も高級と言われているメーカーのものですね。入ってみると分かりますが、日本一のふかふかな感触を楽しめます(笑)。有名な建築家もよく使っているんですよ」

こちらの照明も鰤岡さんによるもの。「あまり時間がなかったので、これは外注でオーダーしようと思ったんですが、ブランドサイドから『鰤岡さんにつくってほしい』と言われて、ぼくがつくりました(笑)」とのこと。こちらもモールディングによって、シンプルながら存在感のある仕上がりになっています。

写真を通して自然の尊さや、アウトドアの奥深さを発信していく。


さて、この店の見どころは鰤岡さんのデザインだけではありません。店内に飾られている写真もその魅力のひとつ。これは写真家の濱田紘輔さんによるもので、北海道の十勝にある自然や、そこで行われている林業を追いかけたドキュメンタリーフォト。映し出された景色が、店内に季節感をもたらしています。

「お店に飾られているのは今年の2月に十勝へ行って撮影してきたものです。たまたま友人が住んでいて、防風林として唐松を育てていました。現地のひとたちはいろんなものを循環しながら生活をしていて、そこにフォーカスした作品を飾っています」

濱田さんが着るのは〈ウールリッチ〉のアーカイブをもとにしたフリースジャケット。保温性と速乾性に優れたPOLARTEC® THERMAL PRO®を採用。¥31,900

現在は冬の十勝の写真を飾っていますが、季節が変わるごとにその時期にあった風景の作品に切り替えていく予定とのこと。「ウールリッチ アウトドアレーベル」では、こうした写真を通して自然の尊さを伝え、アウトドアの奥深さや楽しさを発信していくのだとか。

「店内には限られた写真しか展示されていませんが、こうした写真集を配布して、十勝で撮ってきたたくさんの写真を見てもらえるようにしています。タイトルは『WISH YOU WERE HERE(あなたとここにいたい)』。映画『男はつらいよ お帰り 寅さん』の英語タイトルから引用したものです。寅さんのように全国を巡りながら、たくさんの物語を伝えるという想いを込めました」

写真集には「ウールリッチ アウトドアレーベル」の服は一切登場しません。だからこそ、現地の空気感がずっしりと伝わってくるのです。ふとしたときに見返したくなる、そんな工夫がされています。

「表紙には北海道の木でつくられた紙を選びました。今後もそうやって撮影した土地のものを使っていこうと思っています。ブックデザインは仲村健太郎さんという京都を拠点に活動する方に依頼しました。さらにプリントは『藤原印刷』というアート系に強い印刷所にお願いしています。プリントディレクターによる細かな色出しにも注目して欲しいです。写真の表情が本当によく出ていて、現地の空気感がより伝わるようになりました」

「フロアのタイルもイタリアから取り寄せた、本物の石を使ったものです。端の部分をあえて露出させることで、その厚みが伝わるように工夫しています」

濱田さんの写真集は部数限定で商品を購入した方に配られる。


鰤岡さんも写真集を手に取りながらじっくりと作品を眺めます。

「すごくいい写真ですよね。濱田くんの写真が店内に飾られたことによって、お店がすごく引き締まりました。季節によって写真が変わって、それが空間にどんな作用を及ぼすのか。すごく楽しみです」

居心地がいいけど、どこか現実とはかけ離れた空間。

店内には〈ウールリッチ〉や〈ウールリッチ アウトドア レーベル〉の服に加えて、〈エメ レオン ドレ〉とタッグを組んだアウターも。¥103,400

注目してほしいのはモールディングと呼ばれる、凹凸で魅せる装飾の部分。壁面の上下にあしらわれた巾木(はばき)と、ドアの枠に施されています。

温かみ、落ち着き、そしてどこかに感じる高揚感。店内にいると感じられるそうしたムードは、細かなデザインの集積によって成立しています。それはすべて鰤岡さんの頭の中で描かれていたもの。案内を一通り終えた頃、こんなことを語っていたのが印象的でした。

「ぼくは店の内装や、家のインテリアなどを手掛けていますが、家と違って店舗は振り切ったことができるんです。ストアデザインの魅力ってそういうところにあると思うんです。日常では感じられない何かがやっぱりあって、居心地がいいんだけど、どこか現実とはかけ離れた空間にしたいと心がけています。それが買い物をしているときの高揚感に繋がればいいですね」

鰤岡さんが着るのは40年代と90年代のハンティングジャケットをミックスしてつくられた一着。¥68,200

都会という無機質な景色の中にある自然。「ウールリッチ アウトドアレーベル」がつくった「自然の温もりと街との共存」を具体化した店は、贅沢な空間でありながら、気持ちをリセットできる場所のようにも感じます。最後に鰤岡さんに「お客さんにどんなことを感じてほしいですか?」と尋ねると、こんな答えが返ってきました。

「ここは店の広さに対して置いてある服の数が少なくて、ゆっくり見れるし、本当に贅沢な時間を過ごせると思います。いろんなところに全力投球したし、見えないところにもこだわったので、訪れたひとに五感で感じてもらって、家に帰ったときに『あの店、なんだかよかったな』って思ってもらえたら嬉しいですね」

profile

濱田紘輔

写真家1990年生まれ。写真を撮ることが好きで、脱サラして都内のスタジオに就職。技術を学んだあとに独立し、現在はフリーランスの写真家として活動。雑誌や広告などの撮影を手掛ける他、これまで2冊の写真集『Between Me & the US』『THE LAUNDRIES』を出版している。
Instagram:@kosukehamadas

Edit_Yuichiro Tsuji, Ryo Muramatsu

Photo_Yuya Wada

  • use item

    • POLARTEC FLEECE JACKET

      ¥31,900 (tax in)

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鰤岡力也に学ぶ、ショップデザインの極意。ウールリッチの新店の魅力はどこに?

Dec 26, 2023

店内に配置されたモーブレーワークスによる家具。


「モーブレーワークス」といえば、鰤岡さんが手掛ける家具も見どころのひとつ。もちろんこの店でも、そうした家具の数々が空間をより一層魅力的なものにしています。
太陽の光が気持ちよく入る空間に配置された木製の家具。試着室の前に置かれ、リラックスしながらスタッフとのコミュニケーションを楽しんだり、服を吟味したりすることができるのです。
「ランプシェードは〈ラファブライト〉というフランスのメーカーのものにしました。ぼくの自宅でも使っていて、お気に入りなんです。他にはない和洋折衷なムードが好きです」
「椅子はイギリスのどこかのガーデンで見た3人がけのベンチを参考にしました。それがずっと頭の中にあったんです。デザインを思い出しながら、ひとりがけ用にアレンジしています。クッションのファブリックもイギリスのメーカーのものを選びました」
試着室に置かれているオットマンも鰤岡さんのお手製。バッファローチェックの生地は、〈ウールリッチ〉の工場がアメリカにあった時代につくられたものが奇跡的に残っていて、それを使っているのだとか。

「ちなみに試着室の絨毯は〈山形緞通〉という、日本で最も高級と言われているメーカーのものですね。入ってみると分かりますが、日本一のふかふかな感触を楽しめます(笑)。有名な建築家もよく使っているんですよ」
こちらの照明も鰤岡さんによるもの。「あまり時間がなかったので、これは外注でオーダーしようと思ったんですが、ブランドサイドから『鰤岡さんにつくってほしい』と言われて、ぼくがつくりました(笑)」とのこと。こちらもモールディングによって、シンプルながら存在感のある仕上がりになっています。

写真を通して自然の尊さや、アウトドアの奥深さを発信していく。


さて、この店の見どころは鰤岡さんのデザインだけではありません。店内に飾られている写真もその魅力のひとつ。これは写真家の濱田紘輔さんによるもので、北海道の十勝にある自然や、そこで行われている林業を追いかけたドキュメンタリーフォト。映し出された景色が、店内に季節感をもたらしています。
「お店に飾られているのは今年の2月に十勝へ行って撮影してきたものです。たまたま友人が住んでいて、防風林として唐松を育てていました。現地のひとたちはいろんなものを循環しながら生活をしていて、そこにフォーカスした作品を飾っています」
現在は冬の十勝の写真を飾っていますが、季節が変わるごとにその時期にあった風景の作品に切り替えていく予定とのこと。「ウールリッチ アウトドアレーベル」では、こうした写真を通して自然の尊さを伝え、アウトドアの奥深さや楽しさを発信していくのだとか。

「店内には限られた写真しか展示されていませんが、こうした写真集を配布して、十勝で撮ってきたたくさんの写真を見てもらえるようにしています。タイトルは『WISH YOU WERE HERE(あなたとここにいたい)』。映画『男はつらいよ お帰り 寅さん』の英語タイトルから引用したものです。寅さんのように全国を巡りながら、たくさんの物語を伝えるという想いを込めました」
写真集には「ウールリッチ アウトドアレーベル」の服は一切登場しません。だからこそ、現地の空気感がずっしりと伝わってくるのです。ふとしたときに見返したくなる、そんな工夫がされています。

「表紙には北海道の木でつくられた紙を選びました。今後もそうやって撮影した土地のものを使っていこうと思っています。ブックデザインは仲村健太郎さんという京都を拠点に活動する方に依頼しました。さらにプリントは『藤原印刷』というアート系に強い印刷所にお願いしています。プリントディレクターによる細かな色出しにも注目して欲しいです。写真の表情が本当によく出ていて、現地の空気感がより伝わるようになりました」
「フロアのタイルもイタリアから取り寄せた、本物の石を使ったものです。端の部分をあえて露出させることで、その厚みが伝わるように工夫しています」
鰤岡さんも写真集を手に取りながらじっくりと作品を眺めます。

「すごくいい写真ですよね。濱田くんの写真が店内に飾られたことによって、お店がすごく引き締まりました。季節によって写真が変わって、それが空間にどんな作用を及ぼすのか。すごく楽しみです」

居心地がいいけど、どこか現実とはかけ離れた空間。


注目してほしいのはモールディングと呼ばれる、凹凸で魅せる装飾の部分。壁面の上下にあしらわれた巾木(はばき)と、ドアの枠に施されています。
温かみ、落ち着き、そしてどこかに感じる高揚感。店内にいると感じられるそうしたムードは、細かなデザインの集積によって成立しています。それはすべて鰤岡さんの頭の中で描かれていたもの。案内を一通り終えた頃、こんなことを語っていたのが印象的でした。

「ぼくは店の内装や、家のインテリアなどを手掛けていますが、家と違って店舗は振り切ったことができるんです。ストアデザインの魅力ってそういうところにあると思うんです。日常では感じられない何かがやっぱりあって、居心地がいいんだけど、どこか現実とはかけ離れた空間にしたいと心がけています。それが買い物をしているときの高揚感に繋がればいいですね」
都会という無機質な景色の中にある自然。「ウールリッチ アウトドアレーベル」がつくった「自然の温もりと街との共存」を具体化した店は、贅沢な空間でありながら、気持ちをリセットできる場所のようにも感じます。最後に鰤岡さんに「お客さんにどんなことを感じてほしいですか?」と尋ねると、こんな答えが返ってきました。

「ここは店の広さに対して置いてある服の数が少なくて、ゆっくり見れるし、本当に贅沢な時間を過ごせると思います。いろんなところに全力投球したし、見えないところにもこだわったので、訪れたひとに五感で感じてもらって、家に帰ったときに『あの店、なんだかよかったな』って思ってもらえたら嬉しいですね」

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濱田紘輔

写真家1990年生まれ。写真を撮ることが好きで、脱サラして都内のスタジオに就職。技術を学んだあとに独立し、現在はフリーランスの写真家として活動。雑誌や広告などの撮影を手掛ける他、これまで2冊の写真集『Between Me & the US』『THE LAUNDRIES』を出版している。
Instagram:@kosukehamadas

Edit_Yuichiro Tsuji, Ryo Muramatsu

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