people
Mar 28, 2025
WORDS BY TSUJI , RYO MURAMATSU
PHOTOGRAPHS BY FUMIHIKO IKEMOTO
――春がやってきました。フライフィッシングの世界でも多くのフィールドが解禁を迎え、ますます盛り上がりを見せる季節。今回は愛知を拠点に釣りの文化や楽しさを広める杉坂ブラザーズの案内のもと、新城市にある寒狭川に訪れました。
友大郎: ぼくらは大人になるまでちゃんと釣りをしたことがなかったんですよ。当時アメリカに留学していたんですけど、親父にいきなり『帰って来い』って言われて、そこから釣りをはじめるようになったんです。
渓亮: うちの親父はもともと釣りをしていて、家業はスーパーを営んでいたんですが、その傍で釣り具の企画もしていたんです。それでぼくらをアメリカから引き戻して、仕事を全部釣りに振り切ることになったんです。
――ふたりが語るお父さんとは、杉坂研治さんのこと。フライフィッシングの世界で知らないひとはいない、超有名な人物です。
友大郎: 70年代くらいに当時最先端のライフスタイルとしてフライフィッシングが紹介されていて、そうしたカルチャーに憧れを抱いたのがうちの親父の世代。90年代に『リバー・ランズ・スルー・イット』っていう映画が流行って、それで一気にフライフィッシングがブームになったと聞いています。
渓亮: もともとはライフスタイルとしての釣りが注目されたようですが、親父たちがはじめた頃に段々と進化して、2000年代くらいになるとテクニック重視になっていったみたいです。
――杉坂ブラザーズのふたりが日本に戻ってきたのも2000年代の後半あたり。そこからお父さんと一緒に毎週のように釣りに行くようになったといいます。
友大郎: 最初はなかなか上手にできなくて、面白さよりも難しさが勝っていました。でもやっていくちにどんどんのめり込んで、川も湖も海も全部行きましたね。親父についていって世界中の釣り場を冒険しました。ボリビアのジャングルの奥地とかも行ったなぁ。世界には有名な釣り場がいくつもあって、ぼくらはそういう情報を常に集めて、いい場所があったらそこへ旅に出るんです。
――南米・ボリビアでは“川の虎”の異名を持つ、ドラドという黄金の魚を釣ったのだとか。
友大郎: アマゾン川の源流なんですけど、日本の渓流のような綺麗な川に、1メートルを超える黄金の魚が泳いでいるんです。そっと近づきながら毛鉤を魚の前に投げると、ものすごい勢いで襲いかかってきて。
渓亮: ジャンプもするし、本当にすごいパワーだったね!
――そうして世界中を巡りながら魚を釣ってきたというふたり。各地の魚を求めて旅をするのもフライフィッシングの醍醐味のひとつ。まるでRPGのゲームのようです。
友大郎: 各地にはフライフィッシャーたちが憧れる魚がいて、それを追い求めて世界中の釣り人が旅をしているんです。
渓亮: 各地のガイド仲間と連絡を取りながら『いまココがアツい』っていう情報を得るんですが、自然相手なのでそんなに甘くはない。一回ぼくがアルゼンチンに行ったときは、そこにあるはずの川が干上がってなくなっていたときもあったんです。ヨーロッパを回ってから2日もかけて行ったのに…。そんなめちゃくちゃ悲しい経験をしたこともありました。
――準備が整ったところでさっそく川へと入っていく杉坂ブラザーズ。この日は前日から雨が降っていたこともあり、いつもより少し増水気味。糸に毛鉤(フライ)を結んで、釣りを開始します。
渓亮: これは全部自作の毛鉤です。フライフィッシングって魚を釣るだけじゃなくて、毛鉤を巻くのもそうだし、フライキャスティングといって毛鉤を飛ばす動作も競技になるくらい、幅の広いアクティビティなんです。
友大郎: アメリカには、毛鉤を巻く人たちが集まるショーがあるんですけど、中には信じられないくらい美しい毛鉤を巻いているおじいさん、おばあさんもいるんです。
渓亮: 『若い頃は釣りばっかしてたけど、いまはこっちに熱中してるのさ』みたいなこと言ってて。
友大郎: それを見て、このカルチャーは一生楽しめるんだなって思いました。釣りだけではなく、フライフィッシングは毛鉤の美しさを追求するアートとしての側面もあるんです。ぼくたちも将来はこんな風になるのかなって思ったり(笑)。
――フライフィッシングの楽しさは、毛鉤を巻いたり、上手にキャスティングをしたり、魚のことを知るために知識を蓄えたりと、さまざまな要素が複合的に絡み合い、その世界観を構築しているところにあります。そしてそこにはファッションのエッセンスも含まれます。彼らは自由に釣りのファッションを楽しんでいるのです。
渓亮: 最初にフライフィッシングを覚えたとき、釣りの格好といえば魚に見つからない色味や、機能性を追求したものばかりだったので、お洒落とは無縁でした。だけど、それが段々と変わってきましたね。
友大郎: 海外ではプロスノーボーダーがオフシーズンにフライフィッシングをやっていたりして、彼らの自由なスタイルは衝撃でした。ぼくが留学していたモンタナ州では、フライフィッシングといえばハットのイメージ。もともと古着が好きだったし、普段着ているネルシャツを着たりと、もっと自分が好きな格好で釣りをしてもいいんじゃないかって思うようになったんです。
渓亮: 当時、釣り用の偏光サングラスはお洒落なものがなくて、自分の好きなフレームを買って、釣り用の偏光レンズに入れ替えて使ったりもしていたんです。
友大郎: そんな感じでぼくらは自由にフライフィッシングを楽しむようになっていったんですが、気がついたら周りにも同じような仲間が集まっていましたね(笑)。
――この日、彼らが着ているのは〈ウールリッチ アウトドアレーベル〉のウェーディングジャケット。〈ウールリッチ〉のアーカイブをベースに、現代の感性を加えてデザインされており、クラシックとモダンがバランス良く共存したアイテムです。
渓亮: インスタでこのレーベルのことを知ったんですけど、〈ウールリッチ〉にこんなかっこいいウェーディングジャケットがあったんだって衝撃を受けました。珍しいカラーリングにもすごく惹かれました。着てみたいって思わせるアイテムですよね。
友大郎: 〈ウールリッチ〉ってもっと素朴なイメージがあったんだけど、このレーベルはその印象をいい意味で覆してくれました。ルックを見させてもらって、世界観がとにかくかっこいい。めちゃくちゃ洗練されてますよね。
――デザインも大事だけれど、実際に気になるのは機能面。ウェーディングジャケットというからには、きちんと釣りで使えなければ意味がありません。
友大郎: 道具としてもバリバリ使えますよ。ポケットが大きくてフライボックスもしっかり収納できるし、フラップがついているから中に水が侵入することもない。個人的にはハンドウォーマーがついているのもありがたかったですね。寒いときって、やっぱりポケットに手を突っ込みたくなるので。それにゴアテックスの生地で防水だし、軽いから疲れにくい。Dリングもついてて、本当に申し分ないです。
渓亮: ポケットがたくさんついているところも魅力的だなと思いました。ちゃんと丈も短くて、川の中に入って裾が濡れることもないですし。普通に使えるウェーディングジャケットだなって思います。
兄・友大郎、弟・渓亮ともにプロのフライフィッシャーとして活躍する。地元の愛知県岡崎市では、フライフィッシング専門店「WORLD WIDE ANGLERS」にてオリジナルブランドなどを展開。YouTubeチャンネルや、管理釣り場「岡崎トラウトポンド」の運営もしており、釣りの文化を広めるための活動も行っている。
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